「国家の品格」 藤原正彦(著)

国家の品格 国家の品格
藤原 正彦 (2005/11)
新潮社
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内容(「BOOK」データベースより)
日本は世界で唯一の「情緒と形の文明」である。国際化という名のアメリカ化に踊らされてきた日本人は、この誇るべき「国柄」を長らく忘れてきた。「論理」と「合理性」頼みの「改革」では、社会の荒廃を食い止めることはできない。いま日本に必要なのは、論理よりも情緒、英語よりも国語、民主主義よりも武士道精神であり、「国家の品格」を取り戻すことである。すべての日本人に誇りと自信を与える画期的提言。

感想
読んでいて、うなずけるところが多々ありました。「わかるワ〜」と思ったのは、著者がケンブリッジ大学で研究生活を送っていたとき、そこの有名な数学教授に、
「夏目漱石の『こころ』の中の先生の自殺と、三島由紀夫の自殺とは何か関係があるのか」
と聞かれ、しどろもどろに答えたという話です。また、著者が話をしたある商社マンは、ロンドンに駐在していたとき、お得意さんに、
「縄文式土器と、弥生式土器とはどう違うのか」
と聞かれたそうです。

これを読んで、ボストンでの悪夢がよみがえりました。私はボストンで大学院に通っていたのですが、遠藤周作の「沈黙」に見る日本人の宗教観について意見を求められ、幸いこれは私も読み、感銘を受けた本であったため、自分なりの見解をのべることができました。しかし、次に

「ところで平安時代の次は、何時代なのか」

と聞かれ、確信を持って答えられなかった私は、
「えーと...たしか鎌倉時代だったと思うけど、母に聞いて確かめておくわ」
と答えるしかありませんでした。ボストンではキツい勉強に耐え、つらい経験もいろいろしましたが、これほどはずかしい思いをしたのはこのときだけです。

海外のインテリ、エリートというのは、こういうことを突然に聞いてくるものなのです。日本人に向かって、シェークスピアの作品について聞いてくる人は誰もいません。自分の祖国の文化や、歴史を知らないひとが、はたして海外で認められるとは思えません。私もこれでも昔は、伊勢物語も、落窪物語も、枕草子も好きでしたし、伝記は戦国時代の武将のものを好んで読むという、渋い子供だったのです。それが、高校からアメリカに留学したせいで、すっかり日本文学や、日本史から遠ざかっていました。留学したことを後悔してはいませんが、それによって失われたものも多々あったと言わざるをえません。

ですから今、小学校で英語を教えようという動きがあるようですが、私に言わせれば、英語を教える時間があったら、日本の歴史や、文学を教えるべきです。英語の勉強というものは、何も小学生から始めなければいけないものではありません。私も母も身を入れて英語を勉強しだしたのは高校に入ってからですが、今では問題なく話せています。企業でTOEIC研修の講師をするということを仕事としている母に先日、
「このあいだアエラ(雑誌)で読んだけど、今って、両親とも日本人なのに、英語を母国語にして育てようとする親がいるんだって」
と言うと、ただひとこと、
「...アホやな」
と言っていました。

日本では、英語ができるひとが必要以上にもてはやされていますが、いくら英語ができても、くだらない話しかできないのなら、話になりません。外国語などよりも真の教養をまず身につけるということがどれだけ大事なことかが、まったく理解されていないように感じます。平安次代の次がわからなかった私がえらそうに言うのもなんですが。

それからこの本の、祖国に対する愛を持たなくてはならない、という主張にもとても共鳴しました。アメリカで暮らしていると、
「アメリカに来てたら誰からもうるさく言われずにすむしさ、楽じゃない?日本って窮屈だし、できればもう、ずっとこっちに住みたいんだよね」
などと言う日本人留学生にも、ごくたまに会いました。いちおう、
「ふうん、そうなんだ」
と受け流していましたが、内心、かなりひいていました。

私は、ただ単に日本が嫌いなので、できれば外国に住みたいと言うひとに魅力を感じません。それは、私が日本がほかのどの国よりも優れていると思っているからではなく、そういうひとは、この本の言う「品格」に欠けていると思うし、自分の祖国について悪く言うひとが、国際社会で尊敬を得られるわけがないと思うからです。

私も留学するようになってから、日本特有の美、四季の移り変わり、欧米にはない繊細さや情緒といったものに目を向け、感謝できるようになりました。そのような感覚は、これから海外で活躍しようと思うひとにとってとても大切なことです。なぜなら、英語ができれば国際人になれるわけではなく、日本人としての感覚を持ち、なおかつしっかりとした人格と教養を併せ持つひとがそうなれるのだと思うからです。これから海外に出ようと考えておられる方には、特に読んでいただきたい本だと思います。

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15 : 01 : 10 | 日本社会 | トラックバック(1) | コメント(140) | page top↑
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